大会長挨拶

大会長 小泉 進
岩手県医療ソーシャルワーカー協会 会長

 このたび第74回公益社団法人日本医療ソーシャルワーカー協会全国大会・第46回日本医療社会事業学会(岩手大会)を、岩手県盛岡市にて開催できますことを大変光栄に思い、大会長としてご挨拶申し上げます。

 岩手県医療ソーシャルワーカー協会は、広大な県土と多様な地域性を抱える岩手の医療・保健・福祉の現場と共に歩み、生活者の視点に立った支援を積み重ねてまいりました。全国大会を岩手の地で開催できることは、これまで協会を支えてくださった県内外の皆さまの温かなご支援の賜物であり、心より感謝申し上げます。

現在、当協会の会員数はおよそ105名。全国的に見れば決して多い人数ではありません。しかし、だからこそ、全国から集まる皆さまと交流し、学びを深め合えるこの大会を大切にしたいと考えています。規模の大きな協会ではないからこそ、精一杯の「おもてなし」と、皆さまにご満足いただけるよう心を込めたプログラムを準備してお待ちしています。

 岩手大会のテーマは、『ソーシャルワークとウェルビーイング ~「ほんとうのさいわい」をめぐる旅~』です。

 ソーシャルワーカーは、日々の実践のなかで「正解のない問い」に向き合っています。クライエントそれぞれの歩んできた人生や価値観に寄り添いながら、その人なりのウェルビーイングを支えていくことが私たちの役割です。同時に、ソーシャルワーカー自身も一人の人間として、自分のウェルビーイングを大切にしながら生きる存在でもあります。

 副題に掲げた「ほんとうのさいわい」という言葉は、岩手県花巻市出身の宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』に由来しています。物語の終盤、ジョバンニとカムパネルラが旅の中で悩み、問い続けた「さいわい」とは何か――それは人によって異なり、すぐに答えが見つかるものではありません。だからこそ、ソーシャルワーカーはその人の人生に寄り添い、共に道を歩みながら、時に遠回りもしつつ「ほんとうのさいわい」を探す旅を支える存在であると私たちは考えています。

 現代社会では、高齢化や貧困、災害、孤立など、多様で複雑な課題が人々を取り巻いています。そんななかで、いまソーシャルワーカーにできることは何か。岩手という土地に集い、語り合い、考えることで、明日からの実践につながる新たなヒントや力を持ち帰っていただけるよう願っています。

 基調講演やシンポジウムでは、ウェルビーイングを多角的に捉える内容を予定しています。また分科会では、全国からの実践や研究が発表され、仲間同士の交流や意見交換を通じて多くの学びが得られるでしょう。学びと同時に、久しぶりの再会や新たな出会いを楽しんでいただけるのも全国大会の大きな魅力です。

 盛岡市は新幹線で首都圏からおよそ2時間。コンパクトで歩きやすい街並みに、豊かな自然と食文化が息づいています。ぜひ岩手の空気に触れ、心をリフレッシュしながら学びを深めていただければ幸いです。